中小企業がITツールを「使えない」と判断する理由
急激なIT化は以前から始まっていましたが、コロナ禍で更に加速したと皆さんも思っておられると思います。
実は2010年よりも前からzoomのようなビデオチャットというものは可能で、現在のリモートワークも実行は可能でした。ですが、その頃は世の中の大多数が認知していませんでした。
しかし、コロナ禍でリモートワークという働き方が推奨され、IT以外の企業でも一般的に行われるようになると一気に「当たり前」という認識になりました。
「ITツールによって場所にこだわらない働き方ができる」が「当たり前」になったため、今では都市の高い賃金の人のかわりに田舎の安い賃金の人をリモートワークで雇うという方法までも一部の企業は取り入れ始めています。
特に、IT先進国のアメリカでは地方の人を都市の人より安く雇う動きが顕著になってきています。
ITは社会に大きな変化を与える力を持っていると良く分かる例だと思います。
では、日本の中小企業はそんな「大きな力を持っているIT」を活用できているでしょうか。
IT導入の実施状況(全産業)
商工中金の2021年の調査で、中小企業のIT導入の実施状況が見えてきました。
「検討中」を含めてようやく約6割であることから、実際に導入されているのは更に少ないと想像がつきますね。
しかし、世の中には無料だったり安く使えるITツールがたくさんあります。
にもかかわらず導入が進まないのは何故なのでしょうか。
ITベンダーと中小企業のギャップ
当社がさまざまな中小企業のお客様と話をしたところ、見えてきた共通の問題があります。
それは、ITベンダーやITツール企業の掲げているものと中小企業が求めているものにギャップがあることです。
IT企業が提供してくれるツール
・「業務の改善」を目的とした高性能、多機能な製品
中小企業が欲しいツール
・ウチで使い続けられるもの
これは「高性能・多機能な製品」=「使い続けられるものではない」ということでしょうか。
基本的にそんなことはありません。ツールをしっかりと使いこなせるなら、業務は改善され、効率は上がります。ただ「使える状態にない」ということです。そもそも、多くの中小企業にとってITツールは不慣れな乗り物なのです。
不慣れな乗り物
自動車は自転車や徒歩に比べて、圧倒的に高性能で多機能な乗り物ですよね。
しかし、自動車免許を取得してすぐの人では知らない道を走るのはかなり怖いはずです。
どこを注意するべきなのかわからないですし、ウインカー・ワイパー・ヘッドライトなどの操作もおぼつかない状態です。
同乗者の様子を確認するなど、運転以外のことをする余裕なんてありません。
一方、慣れた人なら見知らぬ道でも気をつけるポイントがわかります。
前を見ながらウインカーやワイパーを操作できますし、チラッとバックミラーをみて後部座席に座っている同乗者の様子を確認してエアコンの温度を調節したりすることも難無くこなします。
ラジオや音楽を聴きながら一緒に歌ったり、別の考え事をしながらでも走れます。
バック駐車も狭い道路での道の譲り合いも問題ありません。
これらは全て慣れです。
車の全長や横幅・挙動や操作方法などのように、ITツールでもその全容を把握していれば、何をどこに入力するのかあらかじめ考えてから入力でき、スムーズでストレスなく操作できます。
自動車の運転の例とは異なる点として、ITツールは関わる全員がある程度の「慣れのレベル」に達していないといけないという特有の問題があります。車であれば使用する個々人がなれていれば問題ありません。しかしITツールはチームで使うものなので、全員がスムーズに使えないと足を引っ張ってしまうのです。
若い方はすぐに慣れることが多いですが、年配の方はどうしても慣れるまで時間と負担がかかります。慣れるまでの間、大幅に効率が下がってしまい「使えない」と判断されてしまいます。
既存のやり方との混在
更にもう一つ、ITツールには「使えない状態になる」理由があります。
それが既存のやり方との不整合です。
営業ITツールを営業部門に導入したとします。
部の中で使われていたエクセルの報告書などが置き換わり、クラウドなのでどこでもアクセスでき、事務所に帰らずとも出先で報告書を作成、上長の承認が得られるようになりました。
直帰しやすくなり、楽になったと思ってもらえます。
しかし…
上記のような問題が発生しがちなのが実情です。
ツールを導入する前までのやり方であれば、営業部門と他部門のフォーマットが共通していたり、別々のフォーマットであってもほとんどコピーと貼り付けで終わったり、Excelが得意な社員が楽に入力できるマクロを組んでいたりと緩く連携が図られていることが多いです。
しかし、今回の様に特定の部門だけが部内で使えるITツールを導入し、部内のやり方を置き換えてしまうと、今までにあった連携が切れてしまいます。
結局、連携が切れた部分を手入力で補う必要がでてきます。
そして「入力作業ができるのは事務所だけ…」となってしまうと、クラウドサービスの「どこでも使える」というメリットもITツールの「業務効率化」も損なってしまいます。
こうなっては意味がありません。意味がないので「使えない」と判断されてしまいます。
「慣れ」と「連携」の問題を解決するためには
「慣れ」にしても「連携」についても、大多数のITツールの導入で立ち現れる問題です。
解決しなければ折角のツールも宝の持ち腐れになってしまいます。では、どうしたらいいのでしょうか。
まずは「慣れ」についてです。
まず大前提として、「なぜ使わなければならないのか」「導入によってどの程度業務が改善されるのか」といった目的や成果が使用する側にも浸透していなければなりません。
その上で使ってもらうことで、最初の苦痛を乗り越えてもらう必要があります。
苦痛は当然小さい方がいいですよね。なので、採用するITツールの選定は大切です。
ITツールはたくさんあります。例えば営業支援のSFAツールだけとっても、有名なものからニッチなものまで、無数にあると言えます。
その会社にとってアタリのものもありますし、ハズレのものもあります。
「一般的にどうやってツールが採用されるのか」というと、大多数が競合ツール同士の営業資料の比較で決まっています。
比較内容は金額であったり、〇〇機能の有無であったりという形です。採用までの流れの内、実際に使用する一般社員が触る機会はほとんどないことが多いです。あったとしても、採用目前で上長から「これでいいよな?」「これ使う予定だから」と言われ、OK以外の選択肢が残されていない状態だったりします。
ITツールを導入すると言うことは、全く経験のないことをするということです。
その選定は、車両の選定のような「これまでのノウハウで決められるもの」ではありません。
「総務部門やICT部門だけ」や「経営層だけ」で決めるのでは無く、使用予定の一般社員の声も含めるべきです。可能であれば、いくつかをピックアップし、試験的に使用してみて、使用感のコンペティティションを行う方がいいでしょう。
次は「連携」についてです。
ネックになるのは「既存のやり方との連携」です。
ITツールは基本的な「使い方」が決まっているため、使い方に含まれないものには対応が難しいことが多いです。
この問題を真正面から解決する方法として「ベンダーにツールを改造してもらう」というやり方もあります。しかしこれはコストのかかるやり方です。
そもそも、1つのツール内で全てを完了させる必要はありません。
多くのITツールは出力機能を持っていますから、データを取り出すことは可能です。
そして、取り出したデータを人の手で加工するのではなく、コンピュータの力で自動的に加工してもらうのです。
Excelが得意な方が社内にいれば、出力されたデータから自動で既存のフォーマットを作ることができるでしょう。
もしExcelが得意な人がいないということであれば、RPAという方法があります。
RPAについてご存知ない方は、過去に紹介していますのでご覧ください。
導入するツールで不足する点を、別のツールで補うことで連携の問題はほとんど解決します。
まとめ
中小企業がITツールを導入する際に「慣れ」や「連携」の問題が立ち現れ、対応ができず、折角導入したツールが使えずにITに対して悪い印象だけが残るケースがあります。そうならないためにも、選び方や使い方に工夫が必要ということでした。
しかし、工夫も自社内で発想するのは限界があります。
「蛇の道は蛇」という諺がある様に、専門にしている企業の助言や支援を得ることで成果が生まれるまでの時間を大幅にカットできます。
また、自社専用のシステムを作ってしまうということも1つの方法です。
「業務の改善」という正解は1つでも、正解に至るまでの道はたくさんあります。できるだけコストのかからない方法を見極めてIT導入を成功させましょう。
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