2024年10月21日

ピークエンドの法則

投稿者: kgi_admin

ピークエンドの法則は「人はある出来事に対し、感情が最も高まったとき(ピーク)の印象と、最後の印象(エンド)だけで全体的な印象を判断する」という法則です。

ピークエンドの法則は、顧客体験、医療、製品設計、教育など、多岐にわたる分野で応用されています。

顧客の経験の設計や改善にあたっては、経験全体の質を向上させるだけでなく、特に強烈なポジティブな瞬間と満足のいく終わりを提供することが重要であるとされています。

騒音を用いた実験

2000年の論文では、騒音に対する不快感の変化が調査されました。

被験者を2つのグループに分け、最初のグループには不快な騒音を大音量で8秒間聞かせます。もう一方のグループには、最初のグループと同じ騒音を8秒間聞かせたあと、「いくらかマシな音」をさらに追加で8秒間聞かせました。

その結果、最後に「マシな騒音」を聞いた2つ目のグループのほうが、1つ目のグループよりも不快度が低かったとのことです。

得られた結論

・記憶に基づく評価はピーク時と終了時の苦痛の平均でほぼ決まる

・不快な経験の持続時間は、苦痛の総量の評価にはほとんど影響を及ぼさない

継続的な苦痛を経験した後で苦痛の程度がわずかに軽減される場合、その経験の全体的な評価が改善されることを示しています。つまり、同じ期間にわたって一定の苦痛を受けるよりも、その苦痛が後半に少し和らげられると、人々は全体としての経験をより肯定的に捉える傾向があります。

実際は後者の方がゆるめの苦痛を前者グループに比べて長い時間受けているだけなのに、印象としてはそちらの方が良くなるのです。

ピークエンドの法則は当初、苦痛に関する実験でしたが、現在ではマーケティングやユーザー体験(UX)の設計など、幅広い領域で応用されています。

サービス戦略を策定する際に重要なのは、ユーザーや顧客がサービスや製品を利用する過程で最も強い感情を感じる瞬間(ピーク時)と、利用の終わり(エンド時)に良い感触を残すことです。これらの時点でポジティブな体験を提供することができれば、そのサービスや製品はポジティブに記憶されることになります。たとえ途中で否定的な印象を受けたとしても、それがピーク時や終了時でなければ、全体の評価が下がりづらいといえます。

サービスを向上させるためには、ユーザーがネガティブな印象を持ったピークの部分を明確にし、そのネガティブな要素を減少させつつ、ポジティブな印象のピークをより際立たせることが推奨されます。このアプローチによりサービスの全体的な印象を改善し、顧客満足度を高めることができれば、リピーターの増加が見込めます。

ビジネスにおけるピークエンドの法則の例

IKEA

IKEAの店舗設計は、ピークエンドの法則を巧みに活用しています。具体的には、レジの後に設けられたビストロがその例です。このビストロは、買い物の締めくくりとしての体験に焦点を当てて配置されています。顧客は、広範囲にわたる店内を歩き、倉庫エリアで自分で商品を見つけ、支払いを行うという比較的顧客中心ではないプロセスを経てから買い物を終えます。このプロセス自体は、顧客にとってやや負担が大きいものかもしれません。しかし、会計後に家へ帰る前に手頃な価格で提供されるアイスクリームやスナックを楽しむことで、直前の苦痛が和らぎます。このようにして、購入した商品に対する満足感(ピーク時)のポジティブな印象と合わせて、最終的には快適なショッピング体験として記憶されるようになります。

大規模テーマパーク

大規模テーマパークでは、ピークエンドの法則を巧みに活用しています。それは、アトラクションの「待ち時間」に関する取り組みです。

ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れた際、人気アトラクションの前には、2時間や3時間といった長時間の待ち行列ができるのはよくあることです。そして、長い時間待った末に体験するアトラクションの実際の乗車時間はたったの5分程度で終わることがほとんどです。

このような状況を表面的に見ると、待ち時間と楽しむ時間のバランスが不公平に思えるかもしれません。にもかかわらず、多くの訪問者がアトラクションに満足し、再び長い列に並んで体験したいと思います。

その理由は、ピークエンドの法則によるものです。人々が経験を振り返る際、特に記憶に残るのは最高潮の瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)だからです。テーマパークのアトラクションで言えば、乗車の最後の5分がそのピークでありエンドに該当します。

テーマパーク側は、アトラクションの派手な演出と乗り終わった後の高揚感を通じて、訪問者に最高のピーク体験を提供します。

この理由から、テーマパークは待ち時間を短縮するよりも、アトラクション自体の質を高めることに注力しているのです。

ピークエンドの法則が活用できるビジネスシーンへの活用

営業やプレゼンテーションの構成の工夫

プレゼンや営業では、不利な情報を最後に話すと、その点が強く記憶されがちです。最も重要なポイントを力強く説明し、最後はポジティブなメリットで結ぶことで、相手に良い印象を残すことができます。

また、提案資料は大まかな結論から始めて、徐々に細かい内容になっていくのが一般的です。

そうすると最後のスライドが、見積りや注意事項のスライドになることが多いですが、

最後の印象を良くするために、代わりに、将来のさらなる発展や提案のメリット(おさらい)などを最後のスライドにするのが効果的といえます。

情報発信への応用

情報を伝える際には、重要なポイントや訴求したい内容を、ピークとエンドに持ってくると効果的です。これにより、伝えたいメッセージを受け手に強く記憶させ、製品の購入やフォロワーの増加などの望ましい結果を引き出すことが可能です。

製品のコアバリュー(独自の価値)を際立たせる

ピークエンドの法則を製品開発やサービス設計に応用するというのは、顧客体験の最も印象的な部分、つまり最良の瞬間と最後の印象に焦点を当てる戦略です。この原則に従えば、これらのポイントを最適化すれば全体としての体験が良好だったとの印象を残せるというわけです。つまり、製品やサービスが有する独自の価値(コアバリュー)を際立たせ、それを最大限に磨き上げることが求められます。

例えば飲食業界において、それぞれの店舗には異なるコアバリューが存在します。これは、質の高い料理、迅速なサービス、驚くほどの低価格、大量の提供、極端な辛さ、特別な雰囲気、美しい夜景、豊富な日本酒の選択肢、など様々です。

この特徴を極める一方で、それ以外の部分はあえて削減する勇気も必要です。コアバリューに関連しない部分に資源を割くべきではなく、まずは核となる価値を強化し、他の部分は基本的な水準を保ちつつ顧客からの不満が出ないように管理することが重要です。

ただし、負の体験がピークとならないよう注意は必要で、例えば飲食店であれば極端に不潔なトイレがその一例です。コアバリューを際立たせつつ、その他はクレームにならない程度に保つことが重要です。

UXの最後に力を入れる

顧客の製品利用全体の流れにおいて、特に最終段階に力を注ぎましょう。しかし、顧客体験は一貫して連続しているわけではなく、最新の体験が常に「最後の体験」となるため、この点に注意が必要です。

たとえば、家電店でエアコンを購入し、自宅で設置し、初めて使用するまでの一連の体験は、時間的に間隔があっても連続した体験と見なされます。この中で最新の体験、「エアコンの初運転」を良い印象にすることが重要です。例えば、作業員が運転までしっかり見届け、笑顔で退出するなどが挙げられます。

その後、故障や引っ越し、廃棄などのイベントが新たな体験となり、顧客の記憶を更新します。単に「買ってからその製品を使うまで」という狭い体験ではなく、「その製品を探し始めてから、捨てるところまで」の広い体験で考えましょう。

具体的には、リアル店舗では支払い後の店外への移動、ECサイトでは商品の受け取りや梱包材の処分、物理的な製品では使用完了後の廃棄、インターネットサービスではサービス利用終了が最新の体験になりえます。

顧客へのフォローアップメール送信や商品に添える手書きメッセージなど、顧客に好印象を与える工夫をすることで、最新の体験を肯定的に塗り替えることが推奨されます。

去り際は笑顔で爽やかに

去り際は、笑顔で気持ちよくお別れするのがいいです。これは仕事でもプライベートでも共通です。

最後に見たその人の印象が、そのままその人の印象になるという話もあります。

まとめ

ピークエンドの法則は、人々が経験を振り返る際、経験全体を通じた平均的な感情よりも、最も強烈な瞬間(ピーク)と経験の終わり(エンド)の感情に基づいて判断する傾向があるという法則です。この法則は顧客体験、医療、製品設計、教育など多岐にわたる分野で応用されており、経験の設計や改善にあたって、特にポジティブなピークと満足のいくエンドを提供することが重要とされます。

騒音を使った実験では、ピーク時とエンド時の苦痛の平均によって記憶に基づく評価がほぼ決まり、苦痛の持続時間自体は評価にほとんど影響を及ぼさないことが示されました。これは、不快な経験の後に苦痛が軽減される場合、全体的な評価が改善されることを意味します。

ビジネスにおいて、IKEAや大手テーマパークはピークエンドの法則を活用しており、顧客体験の最後にポジティブな印象を残すことに注力しています。営業やプレゼンテーション、情報発信、製品開発やサービス設計でも、最良の瞬間と最後の印象に焦点を当てることが推奨されます。また、UX設計では、顧客体験の最終段階に力を入れ、最新の体験をポジティブに塗り替えることが大切です。

ピークエンドの法則は、顧客体験の管理や改善において有効な戦略であり、ポジティブなピークと満足のいくエンドを提供することで、全体的な評価を高め、リピーターや顧客満足度の向上を目指すことができます。

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