小売業界で進むダイナミックプライシングとDX
ダイナミックプライシングをご存知ですか?
ご存知ない方もおられると思うので、簡単に紹介しますね。
ダイナミックプライシングとは「ダイナミック:動的な」と「プライシング:値決め」と言う言葉で表されるように、状況に応じて値段を変えると言うことです。
イメージしやすいのはホテルの一泊の値段です。
GW・お盆・年末年始は値段が高くなりますよね。また、近くで大きなイベントがあったりしても、大きく変わります。
「書き入れ時に一年の売り上げの大半を稼ぐ」タイプの業態では当たり前のことでしたが、これが小売業界でも導入が始まりつつあります。
小売業界のダイナミックプライシング
小売というと少しイメージがしにくいので、スーパーマーケットで考えてみましょう。
販売価格はいつ誰が買っても基本的に同じですよね。
「いやいや、シーズンによって野菜や魚の値段は変わるよ!」と思われるでしょうが、これは原因が仕入れ値や仕入れ量が時期によって変わるのが主な原因で、お客さんを惹きつけるための値決めとは性質が異なります。
「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のような昭和の時代を描いたアニメや古い映画作品などを見てると、商店街で野菜やお肉やお魚を買う時に、「いつも買ってくれてるから、サービスしちゃう!」「ありがとう!また来るわ〜」なんてシーンがありますよね。
今現在進行しているのは、このパターンのダイナミックプライシングです。
ポイントカード
しかし、たくさんのお客さんが来るスーパーマーケットでは、お客さんの一人一人を店員さんが記憶して特別なサービスをすることは不可能です。
さらにオペレーション的にもアルバイトやパートのスタッフが中心のため、八百屋の店主のような肌感覚が必要になるサービスを教育することはまず無理でしょう。
また、人と人のコミュニケーションが前提ですと別のお客さんに会話が聞こえてしまうので、「なんであの人だけサービスされて私にはないの?」という不公平感を感じてしまいます。
そのため、高い頻度で来店してたくさん買っていってくれるお客さんを掴む方法として主流になっている方法は「ポイントカード」です。
購入額の数%を一律でポイントにして、そのポイントをお金のように使えるサービスは私たちもお馴染みですよね。「ポイント◯倍デー」に買い物に行くとついつい多く買ってしまった経験がある方もおられると思います。
最近は、スマートフォンの普及で画像のようなカードではなく、アプリに徐々におきかわっていますよね。
今のところポイント使用による値引きが中心ですが、これが変わりつつあります。
ここからが本題です。
DX & ダイナミックプライシング
ポイントカードのスマホアプリ化に伴って、既存のPOSシステム・WEBシステム・データ分析システムが組み合わり、高度化(DX化)しています。
単純に情報の量と精度が向上するだけではなく、新しいアプローチが可能になっています。
例えば、特定の個人に絞ってメッセージを送ることができます
少し話が脱線しますが、インターネット上の広告を思い出してみてください。
例えば「車を買おう」と思って検索をして実際にいくつかの車情報サイトをみたりすると、表示される広告が車一色になりますよね。
これをターゲティング広告と言います。
イメージは、このターゲティングに近い方法です。
高い頻度で来店してくれるAさん。
ほとんど毎回牛肉を中心にたくさん買ってくれるお得意様なのですが、最近来店頻度が極端に落ちてしまいました。
ほんの僅かな距離の差ですが、Aさんの家の近くに別のスーパーが最近出店し、おそらくそこに買い物に行くようになってしまいました。
従来の方法ですと特定の誰かに対してサービスすることは難しいです。
Aさんだけのために牛肉セールなんてできないですよね。
ポイント2倍デーのようなキャンペーンの時に来てくれるかどうか、というところです。
しかし、ここで直接Aさんにだけ「あなたにだけ特別クーポン!牛肉全品2割引!」というメッセージが送れたとしたら、どうでしょうか。
おそらくAさんは戻ってきますよね。
それが可能になりつつあります。特定の誰かにだけ特別なプライシングをすることで、囲い込みができるのです。
未来の小売スタイル
このダイナミックプライシングの仕組みは、スーパーマーケット以外の小売業も含め、まだまだ模索されている段階です。
パッケージとして一般的に広まるには少し時間がかかると思われます。
また、スマートフォンユーザーが前提になっていることも導入の障壁になっています。
一方で、既にスーパーマーケットのスマホアプリはポイント管理の他にも特売チラシを確認できるなど便利になってきています。認知度は高まっていると言えるでしょう。
今のところ、個人別にメッセージを送るという方法は極一部でしか行われていませんが、このやり方がスーパーマーケットの当たり前になるのは時間の問題と思われます。
まとめ
今回は小売業のDXの例として現在進んでいるダイナミックプライシングについてご紹介いたしました。
別の業界同様に、コロナ禍によって小売業も従来通りの方法が見直されるようになり、変化の時代を迎えています。
DXは取り組んだ会社と取り組んでいない会社では大きな差が生まれます。
しかし、一足飛びにDXを行うことはできません。
今回の場合、お客さんがポイントアプリを当たり前に使っている状態でなければ効果を発揮しないです。従来通りのポイントカードを使っておられるなら、まずはアプリ化からスタートするべきです。
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