デジタイゼーションだけではダメな理由
DX・IT化・デジタル化…いろんなデジタル関係の横文字が紙面で踊るようになってきましたが、皆さんはそれぞれの意味が分かりますでしょうか。「デジタル関係の言葉だから全部似たようなものだろ」とお思いであれば、それは大きな間違いです。もし読者の方に経営者・経営幹部の方がおられるのであれば、その思い違いが将来大きな過ちを会社に対して生むかもしれません。
今回はDXと他のデジタル関係の言葉の大きな違いをご説明します。
IT化・デジタル化はデジタイゼーション
ではまず、それぞれの意味を調べてみましょう
IT化
DXよりも前からよく言われるようになった言葉ですね。かなり広く使われる言葉のため、文脈によって少しずつ意味がことなります。しかし一貫しているのは「ソフトウェア・ハードウェアまたはインターネットを用いて、既存の作業の手間を減らす」ということです。
具体的な例:「紙保存からPDFデータ保存への変更」「郵送からEメール」
デジタル化
この言葉も文脈によって変わることが多いですが、基本的には「アナログ世界(現実)の出来事や情報を、コンピュータがわかる形に変更して置き換えること」を指します。
時計の例がわかりやすいですね。デジタル時計はアナログ時計が針で表示している内容を、直接数字を使って表しています。
ビジネスでは、例えば今となっては当たり前となった「会員登録」が挙げられます。昔はお客さんがカーボンコピーの紙に同じ情報を何度も書いて、あとでまとめて店員さんがパソコンに打ち込んだりしていました。それが今ではスマホやパソコンからお客さんが入力して登録完了です。
具体的な例:「アプリケーションで会員登録」
この2つに共通していることは、既存ビジネスの業務効率やコスト削減を行うためにデジタル技術を使っているということです。これを「デジタイゼーション」と言います。文脈によって使われる意味が変わるIT化とデジタル化ですが、多くのケースのではデジタイゼーションの段階を指すと言えます。
デジタイゼーションとデジタルトランスフォーメーションは違う
DXはデジタルトランスフォーメーションと言います。
これは上記の2つのIT化やデジタル化のデジタイゼーションとは似て非なるものです。
「何が違うのか」を端的に言うと以下になります。
デジタイゼーション:既存のやり方をデジタル技術で効率化する
デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を背景にしてビジネスモデルを作り替える
「トランスフォーメーション」の意味は「変形・変換・変容」です。
イメージしやすいのは仮面ライダーシリーズの「変身」でしょうか。
仮面ライダーは変身することで生身の状態とは完全に異なる状態になり、怪人と戦える戦闘力を得ます。
何かしらの理由で変身できなくて一方的に負けそうになったりするのはよくある描写です。
(変身しなくても強いパターンもありますが。。。)
また、警察官が武装するけど怪人相手には負ける描写もあります。
これをデジタイゼーションとデジタルトランスフォーメーションに置き換えて考えると以下になります。
変身前のライダー(一般人):従来通りのビジネス
武装した警官隊:デジタイゼーションして効率化したビジネス
変身したライダー:デジタルトランスフォーメーションしたビジネス
怪人&戦闘員:競合他社(資本力が大きいのでスタッフ多数)
警官隊がどれだけ盾や銃で武装をしても、(演出の都合もあり)基本勝てません。
だからシリーズによっては警察が仮面ライダー化スーツを作り上げたりします。
警察のDXですね。
なぜデジタイゼーションだけでは厳しいのか
仮面ライダーでなんとなくのイメージを持っていただけたと思いますが、なぜデジタイゼーションだけでは勝利が厳しいのでしょうか。
それは、デジタイゼーションが部分最適で終わってしまうからです。
例えば、営業部門で顧客管理・見積り作成を紙からオンラインシステムにIT化したとします。
見積り作成時間と管理は圧倒的に楽になり、本棚に保存されていた大量の過去ファイルも徐々に減っていきます
しかし、注文後のフローが過去のままだったり、別のタイミングでIT化した別のシステムなどがある場合、見積と注文が分断されていて、結局人が介在しなければなりません。
ここで入力ミスが発生するリスクは残っています。また見積りシステムへの入力が億劫になり、最終的に使われなくなるというケースは多くあります。
さらに、管理部門などの別部門が見積・注文の打率を計算しようとした場合が最悪です。
それぞれのシステムが繋がっていなくて切れているので、結びつけを手作業で行わなければなりません。当然、ミス・漏れが発生しますし、何より作成に時間がかかります。
状況が激変し続ける現代のビジネス環境で、現状分析に時間がかかるのは致命的なのは言うまでもありませんよね。
これがデジタルトランスフォーメーションになると話は変わります。
まず、既存の見積、受注、調達・製造、出荷を1つのシステムで行えるように、システム見直しだけでなく現実の流れについても大変革を行います。
そしてこの流れで各部分に連続性のある大量のデータが各部分で出てきます。それを誰でも・どこでも分析することが可能になります。
データ分析をするとザッとあげるだけでも以下の点でこれまでの比にならない効率化が期待できます。
【営業】
状況に応じた受注確度が得られる
【調達・製造】
回転率がわかり先行的な調達・製造が行えるようになり、歩止まり率の改善につなげられる
【経営・人事】
ボトルネック箇所が判明し、効率的な従業員の増員や設備投資を行える
データ分析に難のあるデジタイゼーションでは、同様のことをするには途方もない時間がかかり、最適な時期を逃してしまいます。
例えば工場拡大のような大型設備投資の話を時間をかけて検討した結果、自然災害・流行病・経済危機などで白紙になり、その検討に用いた時間が無駄になるなどです。
特別会議などで幹部層が複数回集まった場合、その人の時給だけでなく、その時間で行えた判断で従業員はもっと早く活動できたはずです。
関係従業員全員の時給や機会損失費用を計算してみると、凄まじい額になるのは予想に難しくないですよね。
まとめ
デジタイゼーションとデジタルトランスフォーメーションの根本的な違いを理解いただけたでしょうか。しかし、「よし、DXを行うぞ」と思っていただけたところで、デジタイゼーションすら行われていない状態では、DX化は不可能です。
仮面ライダーの例で言えば、変身したけど体がうまく動かせない状態になってしまいます。あまりの違いに体が慣れてないからです。
つまり、デジタル技術に対する企業全体の慣れが必要になります。会社全体というのは幹部層の頭だけではありません。従業員も含まれます。というより、メインは従業員です。データの入力や作成を実際に行うのは従業員だからです。従業員という手足が慣れていないのでは、せっかくの「変身」も役に立ちません。
社内でデジタル化が進んでいないと思われるのあれば、まずはデジタイゼーションから始めましょう。
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