デジタル化=DXではありません
DXという言葉を本当によく聞くようになりました。
デジタルトランスフォーメーションという言葉だけに、「デジタルを使う」というイメージがあると思います。
しかし、考えてみてください。デジタルを使う、ということ自体は全く新しいものではありませんよね?1台のパソコン・スマートフォン・タブレット・その他の電子端末のない会社はこの世にありません。何かしら、デジタル的なものはすでにビジネスにとりこまれています。
では、今よく言われるDXとはデジタル化でしょうか?だとしたら今更すぎる話となります。当然、DX=デジタル化ではありません。今回は何が違うのか、DXとは何なのか、例をあげて説明します。
DXとデジタル化の決定的な違い
ずばり言葉で表しましょう
デジタル化 :既存のやり方をデジタルに置き換えるだけ
DX :デジタル技術を前提にした新しいやり方に刷新する
これだけでも、なんとなく違いがわかると思います。
「ハンコ」をデジタル印に変えるのはデジタル化です。
意思決定の方法としてハンコが必要な稟議書というやり方を捨て、社内アプリケーションなどで即時に可否を決めるのがDXです。意思決定までの時間が 1/10 〜 1/100 になります。もちろん、決定事項・提案者・決定者・採決日などのデータはしっかり保存されています。
このハンコの例は、社内の1分野だけの限られたDXです。
次は、よりビジネス的なDXの例を見ていきましょう。
コネクテッドバイクから見えるヤマハのDX
先日、日経クロステックにDXの好例が紹介されていました。
「IoTバイクを生み出したヤマハ、DX推進の「両輪」とは」
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01406/091100007/)
上記の記事をざっくりまとめると、NMAXというバイクにIoTセンサーを取り付け、Bluetoothでスマートフォンとバイクを接続するというものです。ユーザーはスマートフォンでエンジンオイルの劣化具合や燃費を確認でき、異常が生じるとディーラーなどへ関係各所へ通知してくれる仕組みです。
また、ヤマハはIoT搭載バイクからスマートフォンを経由して得られた車体データをAWSというクラウドサービスに保存し、分析して新規開発や部品の在庫・生産量調整に用いるというものです。
この内容をみて「ふーん。これってただの市販バイクのデータロガー化で、DXじゃないな」と思われた方もいると思います。
しかし、それは表面的な捉え方でしかありません。
DXとは、「DX:デジタル技術を前提にした新しいやり方に刷新する」ことと上記で説明しました。
このNMAXとその運用にはしっかりDX要素が含まれています。
修理部品の在庫管理について見ていくとわかりやすいです。
まず、従来の在庫管理ですが、大体のケースは以下の流れになります。
①過去のデータから在庫を決定
②修理店からの注文に応じて部品を出荷
③部品在庫が減ったので補充
④一定期間ごとに出荷された数量から適性在庫数量を見直し
経験による方法です
すでにあるエンジンなどであれば、過去のデータが流用できます。しかし、新型エンジンの場合、頼るべき経験がないため最初は大味な部品在庫数になります
今回のIoTバイクが可能にする在庫管理は以下の流れと予測されます。
①全バイク内のセンサーにより全車体の情報がメーカーのデータベースに保存される
②破損が発生した車体の情報から、修理店から注文が来るよりも先に必要な部品を確保する
③破損が発生した車体と同様の症状が出ている車体の数や、データ分析によって得られた破損の発生確率から適正在庫を自動計算
④適性在庫数になるように自動発注
データ分析と自動化を中心にした方法です。
新型のエンジンであっても、常日頃から得られるデータによって、極力、人の判断なしで在庫管理を適正化できます。
決定的な違い
この2つの流れの内、決定的に違うことがあります。
それは、車体の情報を誰が持っているかということです。
例えば、あるお客さんのバイクのエンジン部品Aが経年劣化で壊れたとします。
従来の方法の場合、車体の状況という状態をもっているのは修理店です。
この修理店から部品を受注したりヒアリングしたりしなければ、そのバイクが構造上どういう弱点を持っているのかという情報が得られません。
また、エンジン部品Aと同時に部品Bにも同時に劣化が見られたけれど、お客さんのお財布状況や作業員がまだ使えると判断した場合、Bは発注されません。この情報はメーカーに伝わりません。
その後、結果的に部品Bも交換が必要となった場合、B単体での交換修理となります。実際には部品Aの破損と部品Bの破損に関係性があるにもかかわらず、AとBの発注タイミングにムラがあるため、相関性に気づくのに時間がかかるというにもなります。
この点、IoTバイクでは膨大な情報がメーカーに自動的に蓄積されていきます。
情報量は全ての修理店が持っているノウハウ全てを加えても足元にも及ばない次元になります。
上記の例であれば、部品Bにも異常が出ているとセンサーが知らしてくれるため、壊れた部品Aだけでなく、部品Bの交換も提案することができます。
それだけでなく、問題のある部品の改善などにもいち早く着手できます。
また、情報量を元にして、逆に修理店・販売店・ユーザーなどへ問題が起こる前に情報提供を行うことが可能になります。
これだけでも在庫の適正化だけではないメリットが見えてきますね。
ビジネスモデルの転換
上記の修理のパターンからIoTバイクによるDXとして修理に関わるビジネスモデルそのものが転換していると気づかれたでしょうか。
今までの情報の流れは、「ユーザー ➡️ 修理店 ➡️ メーカー」でした。
IoTバイクでは、「バイク ➡️ メーカー ➡️ 修理店・ユーザー」となります。
順番が全く違いますよね。
まさに、「デジタル技術を前提にした新しいやり方に刷新する」というDXそのものです。
そして、この仕組みを導入するかしないかで、圧倒的な差が出ることが容易に想像できます。
まとめ
今回はDXとは何なのか、ヤマハ発動機の取組みを中心にして説明させていただきました。根本的に従来のデジタル化とDXは異なります。その違いにいち早く気付かなければ、気づいて取り組んだ競合他社との間に大きな差が生まれます。
しかし、一足飛びにDXはできません。なぜならデジタル技術の知識がないからです。デジタル技術の知識がなければ、「デジタル技術を前提にした新しいやり方に刷新する」ということは不可能です。
デジタル化とDXは根本的に違いますが、デジタル化はDXの第一歩です。
「DXをしなければ」と強く感じられたのであれば、まずは身近なところからデジタル化(自動化)をしていくことをお勧めします。
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