2020年12月22日

野良ロボットの発生原因と対策

投稿者: kgi_admin

RPAが業務効率化・生産性向上の選択肢として、大企業だけでなく中小企業にも普及してきました。RPAは人間の代わりに作業をしてくれる存在ですが、人間にも管理が必要なようにRPAにもしっかりと管理が必要です。人間が組織の中で問題を起こしてしまうように、RPAも問題の原因になったりします。

今回はRPAが問題を起こしてしまうケースの元となる、「野良ロボット」について説明します。

野良ロボットとは

野良ロボットという言葉の「野良」は「野良犬」や「野良猫」と同じ意味を持っています。

野良犬・野良猫の「野良」とはどんな状態かというと、要するに「誰にも管理されず」、「何をしてくるか予測できず」、「どんな病気になっても誰も助けない」というものです。

一方野良犬・野良猫と異なる部分があります。生き物は死で停止しますが、野良ロボットは止められない限り「永遠に動き続ける」のです。

「誰にも管理されず」

RPAは人が作るものです。作った「飼い主」は確実にいるはずですが、いろいろな出来事により「飼い主不在」になってしまいました。

例:人事異動や退職で作成者・管理者・実行者が不在に

「何をしてくるか予測できず」

野良犬・野良猫はいきなり噛み付いてきたりする恐れがあります。野良ロボットも「飼い主」不在では「躾」ができておらず、望んでない挙動をします。

例:必要なファイルを削除、不要なコピー、間違った相手へのメール送信…etc

「どんな病気になっても誰も助けない」

野良犬・野良猫はさまざまな病気を抱えています。飼われていれば動物病院で治療を受け、体調不良になれば看病を受けることができます。RPAも定期的なメンテナンスや修正が必要です。作成時の想定環境とずっと同じということはあり得ません。想定外の状態になっても正常稼働するためには、定期的な手入れが必要です。

例:RPA作成時に想定していないフォルダが追加されただけでデータが正しく保存されなくなる など

「永遠に動き続ける」

生き物には死がありますが、RPAは誰かが止めない限り稼働し続けます。厄介なのは、深夜に稼働するように設定しているケースです。管理者不在のロボットが稼働していることすら気づかず、異常が判明した時には膨大な戻り作業や費用が発生する恐れがあります。

野良ロボット発生の原因

RPAロボットは自然に生まれるものではありません。目的を持って作られ、実行されてます。

しかしその作成者がずっと居てくれるとは限りません。

また、作成者が存在や仕様を忘れることもあるかもしれません。

つまり、他の人が見てもが分かるように「RPAの管理」が必要なのです。

管理不足により野良ロボットが発生する主要な原因は以下です

①退職・異動

作成者が異動・退職になり、業務の中で以下の情報が著しく減る、またはなくなってしまうパターンです。

・どこまでがRPA化してるのか

・RPAがどんな処理をしてるのか

・RPAとRPAがどう組み合わさっているのか

②管理方法・引継ぎの失敗

作成者の異動や退職を見越して管理する仕組みがあっても、以下の問題を抱えるケースがあります。

・管理方法が社内で共通化されていない

・個人で勝手に作ったRPAで管理外にある

・引継ぎ内容やフォーマットにRPAのことが含まれておらず、口頭のみでの引継ぎとなり、重要な内容が漏れる

・引継ぎが重なることでどんどんRPAの情報が減っていく

③内容が複雑すぎる

作成者によって、作成されるRPAの質は変わります。

・全ての例外処理に対応した複雑なRPAになっている

・1つのRPAに複数の業務を詰め込んでいる

複雑であればあるほど、引継ぎ時に理解できなかったり、作成者自身も忘れてしまったりするリスクが高まります。これは、高度なExcelマクロの運用で現れる「〇〇さんじゃないと分からん」という属人化の問題と同質のものです。

また、1つのRPAに複数の業務をまとめてしまうのも危険です。修正する際の難易度が高まり、放置の原因になります。

④使用されてない

一見、使用されてないなら問題ないと思われますが、RPAを「停止してない」なら危険です。

・何してるか分からないし、いつ動いてるのかも分からないけど、現場で問題が起きてないからいいだろう

・止めると何が起きるか分からない。だから止めない

RPAは基本的に特定の時間に特定の作業を行う、というパターンが多いです。

上記のような理由で放置すると、人が見ていない時間に問題が発生して、悪化していく恐れがあります。

⑤導入が目的化

RPAの目的は業務の効率化です。しかし、上からの強い圧力でRPA化を進めると、「とにかく早くRPAを導入する」という実績をあげることが目的になり、「とにかく動けばいい」という方向に考えが向いてしまいます。「とにかく動かす」というマインドでは、適正な順番が無視され、管理が後回しにされがちです。結果、部分的な管理になったり、無管理になってしまいます。残念ながら、これはRPAだけではなく、ビジネス上ではよく見かける構図です。

これらの原因により、野良ロボットが多数存在するようになると、仮に一切何も問題がなかったとしても、正常なロボットの処理に回すべきリソースが奪われます。リソース不足になると、必要なロボットが正常動作しなくなったり、動作が遅くなります。

野良ロボットは、悪さをしなくても、存在そのものが問題なのです

対策は・・・?

「管理をきっちりとする」というのが答えとお分かりだと思います。

しかし、具体的にはどんな管理が必要なのでしょうか?

①番号管理

台帳を作り、全てのRPAに番号を振り分け、どれだけのRPAがどこに存在しているのかが、いつでも誰でも一眼でわかるようにしましょう。可能であれば命名規則も統一しましょう。

②内容管理

RPAのフロー図を1つ1つ開いて確認するのは時間がかかります。どの業務をどう処理しているのかを、検索しやすい形式で1箇所にまとめましょう。また、別のRPAの動作が前提にしているRPAなどは、その繋がりも明記しましょう。

③使用管理

そもそも今使われているのか?というのも管理上重要です。台帳上で管理し、「使われていないハズのRPAが動いている」という状態をなくしましょう。

④定期見直し・変更管理

RPAは作った時のままでずっと運用し続けることは不可能です。

業務の改善など、方法が変わる場合はRPAも変更が必要です。

また、業務変更はなくとも、データの管理方法が変わる場合、RPAの処理手順の修正が必要になるケースが多いです。何かしらの変更が生じる時には、RPAの変更も計画に入れましょう。

変更がなくとも知らず知らずに問題が生じていることもあります。半年に1度など、定期的に全RPAの動作を見直すタイミングを設けましょう。

そして、RPAに変更を加えた場合「いつ・誰が・なんのために」したのかも記録しましょう。いざ問題が生じた際に履歴がなければ「いつから発生している問題なのか」の究明が困難になります。

⑤管理部門

上記までの内容は、RPAの数が多くなると現場の部署だけで実施し続けるのは難しいです。部署を横断して野良ロボットが発生しないよう管理・メンテナンスを行う部隊の作成も計画してください。

まとめ

「暴走するロボット」というとSF映画のようですが、先行してRPAを取り入れている大企業では既知の出来事になっています。「野良ロボット」が実害を出すようになると「ブラックロボット」になります。その被害はどれだけの規模になるか想定できません。

RPAは自動車のようなものです。自動車は、人では絶対に不可能な速度で多くの物を運べます。しかし、操作ミスや整備不良で重大な事故を起こします。その被害も、走っている人がぶつかった程度のものとは比べ物にならないですよね。

便利なものは、便利な分だけ扱いをしっかりしなければなりません。

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