オンボーディングとは
現代日本社会は当たり前のように転職する時代になりました。
転職が当たり前と言っても、迎える側としては出来るだけ長く会社にいてほしい、活躍してほしいものです。
そういった新しく会社に入社する人を迎えるに知っておきたい概念の一つに「オンボーディング」があります。
横文字なので知らないという方も多いと思いますので、ご説明します。
従来のプロセス
中途採用であっても、新卒採用であっても、入社してくれる方々に望むのは「戦力になってもらうこと」です。入ってくる方は自社のことを知らない人たちなので、いくつかのプロセスを経て戦力になってもらうわけです。
「新人を戦力にするプロセス」における活動と言われて具体的に何を思い浮かべますか?
少し考えてみましょう。
やはりイメージしやすいのは新卒の新入社員を1箇所に集めて、先輩社員から自社製品や自社サービスの紹介をしてもらう座学や工場・現場見学などですよね。
さらにその後に色々な部署に短期間の間出向いて、実際の仕事を行ったり同行したりなども一般的です。
期間も長く、数週間から1〜3ヶ月、長いところでは半年から一年という研修期間があったりします、
10年前と比較しても、現在も新卒社員の一括採用はまだまだ「就活」の中心であるため、これらの活動はイメージしやすいですね。
一方で10年前と大きく変わったのは「転職」の増加です。
2019年にあのトヨタが「終身雇用を守るのは難しい」と発表するなど、ここ10年間で大きく日本の雇用は変わりつつあります。終身雇用の崩壊と共に目立つようになってきたのが「転職」です。
別の会社で戦力だった人に自社へ転職してもらい、戦力にすることを中途採用は目的としています。
「別の会社で戦力だった人」なので、当然、即戦力を期待しますよね。
しかしながら、別の会社で戦力だったからと言って、自社ですぐに働けないのが現実です。同じ業界でも会社によって社風や仕事の流れは異なるため、サポートが絶対に必要です。
「即戦力なんだから…」とサポートを怠れば、思った通りの成果を上げてくれず、採用された側も嫌気がさしてすぐに去ってしまうということに繋がります。結果的に時間とお金を浪費しただけになります。
こんな悲しいことが起きてしまう原因は何かというと、サポート不足で「組織・チームの一員という帰属意識を持てなかったこと」があげられます。
「生産性を高めるためには心理的安全性が重要」と最近よく耳にしますが、その大前提として「自分が帰属している」という意識がなければ、そもそも心理的安全性は成り立たちません。
オンボーディングは、「会社の一員」という帰属意識を持ってもらい、チームに溶け込んで戦力になってもらうためのものです。
オンボーディングとは
「オンボーディング(on-boarding)」とは、「船や飛行機の上にいる(搭乗している)」という意味の「on-board」から生まれた概念です。
新しく乗り込んできた従業員やお客さんに対してサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。人事用語としてはさらに意味が追加され、企業が新たに採用した人物を職場に配置し、組織の一員として定着させて、戦力化してもらうまでの受け入れプロセスを意味します。
具体的にどんな行為がオンボーディングになるのかというと、会社によってさまざまです。今回は誰もが知るIT企業のやり方を参考に紹介します。
・行ってもらう仕事の役割と責任について新人と現場のマネージャーが話し合う
・入社直後の人間関係の摩擦を和らげるためにメンター役(≒アドバイスをくれる人)となる先輩の社員をつける
・新入社員が社内でのネットワークを作ることを手助けする
・最初の6ヶ月間、毎月面談(On-boarding Check-In)を行う
・遠慮のない会話を奨励することで、自身の業務を改善するための有用な助言を得てもらう
Google では、新人が配属される部署のマネージャーに上記のチェックリストが送られます。明らかに人間関係の構築に重きを置いていますね。
ちなみにこの内容がマネージャーに送られてくるタイミングも決まっていて、新人が配属されるちょうど24時間前に送られるそうです。理由はもちろん、上記の内容が全て忘れて欲しくない重要な内容だからです。
・入社して初日のデスクに着くまでに、自社のTシャツ、社内メールアドレス、歓迎用ワインが渡されている
・入社当日に詳細なオフィスの案内、社内ツールの使用訓練、業務訓練を実施する
・毎月同僚のたちとの小規模な歓迎会を行い、毎週金曜日に持ち回りで社内プレゼンを行うことで、他の部署との接点をもち、別のプロジェクトについても学べる
Twitter社の特色は何と言っても、いいスタートを切ってもらうことを目的としていることです。「Yes to Desk」という有名な制度です。
初日になってようやく新人の机を準備したり、初日になってようやく新人のための時間を作ろうとスケジュールを調整したり、新人が何もすることがない、ということが無いようにしています。
このようなことが「この会社の一員として働くぞ!」というモチベーションを奪ってしまうものと考えているからです。
Meta(旧名:Facebook)
・「初日に書いてもらう書類」がない状態にする(入社前に済ます)
・自己紹介会のような定型的になっている退屈なことはしない
・初日がスタートして45分以内にメンターから生産的な仕事(実働しているサービスのバグ修正など)をもらって仕事を開始する
・入社後6週間Meta社の全サービス・全領域のエンジニアリングを行うことができ、6週間後に自分が興味を持っている領域の開発に正式に参加する
Meta社の文化は「自給自足の貢献」というもので、上記を見るだけでもかなり特徴的です。特に異彩を放っているのが、最後の項目です。
「Bootcamp」と呼ばれるもので、「自分自身が何に最も興奮し、興味を持っているか」を自身で判断するため、必然的に仕事に没頭して成果を上げ、会社に貢献ができるわけです。
まとめ
今回はITの世界的大企業3社を紹介しました。内容を見ていただいたら分かるように、三社三様です。「これが正解」というものはありません。
また、これらの企業はとても規模の大きな会社であり、どの企業でも真似というわけでもありません。
しかし間違いなく言えることは、オンボーディングにはその会社の社風が色濃く現れています。逆に言えば、従来の昭和時代の新人歓迎・研修を漫然と行っているようであれば、その会社の社風は昭和時代の社風ということになり、必然的に新人も昭和時代の会社員になってしまうと言えます。
全てではなくても、一部であれば巨大IT企業のやり方を真似ることはできます。
少なくとも、新入社員が入ってくる当日になってアタフタするようなことだけは避けたいですね。
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