2021年4月28日

システム開発とは – ベンダの選定と提案依頼書 –

投稿者: kgi_admin

システム開発とは

システム開発とは、「仕組みを作ること」です。定義としては、PCやソフトウェアを使っているどうかは関係ありませんが、昨今では「IT技術を用いて、業務効率化をさせるための仕組みを作ること」を指すことが多いです。

今回のシステム開発も「IT技術を用いて、業務効率化をさせるための仕組みを作ること」と意味で進めていきます。

システム開発と言うと、単にコーディングだけをイメージされる方も多いと思います。しかし、システム開発において、コーディングは工程の一つでしかなく、他にも設計やテストなどの多くの工程が存在します。今回は、システム開発の工程に入る前段階のベンダの選定について説明したいと思います。

ソフトウェアライフサイクル

システムを使う上でシステムの一生というものを知っておく必要があるでしょう。

基本的にシステムは企画されて、要件定義、開発というプロセスを終えて、実際に完成したシステムを運用、定期メンテナンスなどの保守というプロセスを辿ります。そこから、役目を終えるまで、運用と保守を繰り返します。この一連の流れをソフトウェアライフサイクルと言います。

この最初の企画段階ではスケジュールや体制、費用対効果、適用範囲、リスク分析と言った項目を検討します。この企画段階を経て、社内での要件定義のプロセスへと入ります。「どのような機能を盛り込んだシステムが必要なのか」を決める段階です。そして、この社内での要件定義をした段階で、ベンダの選定へと入ります。

ベンダの選定

ベンダの選定はシステム開発に入るまでの最も重要なプロセスの一つです。この契約締結までのいくつかの文書を取り交わすことになります。

情報提供依頼書(RFI : Request For Information)

発注側からベンダ側へ渡すものです。最新の導入事例などの情報提供をお願いします。調達条件などを決定するために必要な情報を集めるために渡すもので、次の工程の提案依頼書を作るために役立てます。

情報提供依頼書に記述するものは、情報提供依頼の目的、対象業務システム、情報提供の実施要領、調達の想定スケジュールなどです。

提案依頼書(RFP : Request For Proposal)

発注側がベンダ側に対し、提案して欲しい内容を記載した資料です。内容は主に、システムに必要な要件や実現したい、予算などです。この次の項目に詳しく書いています。

提案書

ベンダ側が提案依頼書を確認して、具代的な内容を提案書としてまとめます。そして、発注側に渡します。

見積書

提案書の内容で問題なければ、ベンダ側は開発や運用・保守にかかる費用をまとめて、見積書を作成し、発注側に渡します。

提案内容と見積書を確認して、システムベンダの選定を行います。ここからシステム開発の最初工程、要件定義へと入ります。

提案依頼書(RFP:Request For Proposal)

先ほども説明しましたが、提案して欲しい内容を記載した資料です。この資料は億劫に思えますが、システム開発をスムーズに進めて、出来上がったシステムが理想のシステムになるために欠かせないものとなります。

RFPがある場合

メリット

  • システム導入後の自社の理想の姿や実現のためにシステムに必要な機能を明確化できる
  • ベンダの比較がしやすくなる
  • ベンダが自社の気付いていない課題に気付いたり、解決を期待していなかった課題解決の提案をもらえることがある

デメリット

  • RFPの準備に作業時間を要する

RFPがない場合

メリット

  • 発注までの時間が短縮できる

デメリット

  • 口頭で伝えることで、発注側の伝え漏れやベンダ側のメモの抜け漏れが生じてしまう
  • 必要機能などが明確されないまま、ベンダに伝わることでベンダ側で独自解釈しなければならなくなり、認識の不一致が生じてしまう

発注側は必要な機能とその優先度を明確化することができます。また、口頭で伝える場合の抜け漏れも予防することができ、ベンダ側に正しい情報を伝えることができます。

ベンダ側は、口頭ではヒアリングによる情報の抜け漏れを予防することができます。

それでは、提案依頼書に書かれるべき内容は具体的にどのようなものでしょう。

システムの基本事項

システムを開発する背景と目的

  • 現在どんな状況であり、なぜシステム開発を調達するのか。

目標や成果

  • システムによる売上や業務効率化による利益の目標。

予算規模

  • 予算、及び、その予算に含まれる範囲。

スケジュール

  • 提案書プレゼンの日程やベンダの決定、設計・開発の開始時期、システムの運用開始時期など。

ターゲット層

  • 使用するユーザ層。

提案の要件

提案依頼内容

  • 提案して欲しい内容。基本は仕様書の作成、システムの設計、デザイン、コーディング作業、本番サーバーの設定と移行作業など。

納品成果物

  • 納品時に必要なもの。管理画面の操作マニュアルや仕様書など。

システムの機能要件

  • 必要な機能やその概要など。

教育・研修

  • 運用に当たって、発注側の担当者にベンダ側が操作研修をどのように行うか。

チーム体制

  • ベンダ側の体制に対する要求。
  • 発注側のプロジェクト体制。

補足事項・その他

選定基準

  • ベンダ選定時の選定基準

法務事項

  • 契約条件や守秘義務、提案依頼書の取り扱いについてなど。

その他にも現行システムがある場合はそれについても記述すると良いでしょう。また、ECサイトであれば、同種のライバルサイトを記述するのもいいでしょう。

また、ITの知識に乏しく、迷っている点や分からない点がある場合はその旨もベンダ側に伝えるといいでしょう。決まっていない点に関しては、ベンダ側がいくつかの選択肢を提示することができ、そこから自社のシステムに合ったものを選択することが出来ます。

RFPの書き方にはついてテンプレートなども存在するので、ネット上で検索してみましょう。形にこだわる必要はありませんが、できる限りの提案して欲しい点と、システムによって何をもたらしたいかを明確にして伝えることで、ベンダ側からよりよい提案書を受け取ることができるようになるでしょう。

まとめ

今回はシステム開発工程に入る前段階のベンダの選定と提案依頼書についての紹介をしました。

提案依頼書は、ベンダ側からいい提案を受け取るために必要なだけでなく、発注側も自社の状況やシステムによって変わる理想の姿を考えるチャンスともなります。

システム開発において発注側とベンダ側のコミュニケーションは非常に重要です。そして、提案依頼書はそのコミュニケーションのスタートとなります。役立ちそうだと思う情報は全て開示することで、より使いやすく、より洗練されたシステムができるはずです。

発注側の社内のことは発注側では常識的に分かっていることであっても、ベンダ側では分からないということをしっかりと覚えておきましょう。そのために、客観的に自社を見て、出来るだけ言語化することが、理想の姿へ導くためのシステムを作る重要な鍵となります。

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