ERP導入を失敗させないためのポイント
ERPの導入に成功している企業は多くあります。しかし、一部の企業ではシステムが使いにくくなった、何も変わっていない、経営側がデータを活かせていない、などERPの導入を成功させられないこともあります。このような企業は高いコストをかけて導入したものが無駄になっただけでなく、なんとか成功させようと追加のカスタマイズをして余計に労力を無駄にして、損益を招くパターンもありえます。
この記事ではERPの導入を失敗させないために、ERP導入を行う前に行うべきポイントについて説明していきます。
ERP導入の成功とは
まずはERP導入の成功は何かを考えてみましょう。
ERPは統合データベースによって、様々な部署のデータが一元管理することができ、それぞれの部署の入力や変更されたデータがリアルタイムに反映されます。別の部署で問い合わせたりする手間なく、直接ERPで情報にアクセスできるのもいい点でしょう。別のシステムを使うことで生まれるデータ入力の重複という無駄なタスクがなくなることもメリットでしょう。
また、経営面では社内の情報がリアルタイムに把握することができ、経営状況に応じた迅速な判断をすることが可能です。
ERPはいろいろなソフトウェアのようにパソコンにインストールしてすぐに使えるものとは異なります。経営から、営業・販売、人事や生産現場などいろいろな部門のパソコンのバックグラウンドで働くシステムです。すぐにERP導入の成功を実感することは難しいかもしれません。
しかし、ERP導入して使用していくごとに情報の取得時間の短縮や重複したデータ入力の解消など様々な効果を感じるようになるでしょう。現場ではそこで成功を感じるかもしれませんが、企業全体を見るとそれがゴールではありません。企業はそこで集められたデータを分析・加工、そしてそれに基づいた正しく迅速な判断ができてこそERPを導入した意味が生まれます。
企業の将来像を形成
ERPはタスクを削減し業務を効率化するとともに、リアルタイムなデータ反映で経営の迅速な判断を可能にします。その双方にプラスの効果を与えることがERP導入の成功といえます。
ERPを導入するときはERPを導入することによって、将来企業がどうのようになっていたいのかを明確にしておくべきです。そしてそれを実現するために経営陣が、社員が、組織全体の体制がどのようになっておくべきなのかもちゃんと考えておきましょう。
このことがERPを開発、またはカスタマイズの段階での設計に非常に重要となります。
既存システムの分析
ERP導入前になんらかのシステムを入れている企業は少なくないでしょう。また営業や生産など部門・部署によって使っているシステムが異なる場合があります。その既存システムそれぞれをしっかりと分析して、以下のことを洗い出しましょう。
・既存システムが行える業務
・既存システムの使用の流れ
・既存システムが行えない業務
・既存システムで不便に感じる箇所
業務プロセスは企業ごとに異なるので、上記のことを洗い出すことによって設計に抜け漏れが起こりにくくなります。そして、導入後の業務の効率化がスムーズに実現できようにもなります。
開発事業者の選定
ERPを導入する上で開発事業者(ベンダー)を選ぶことは言わずもがな非常に重要です。ERPは導入して終わりではありません。導入してからもメンテナンスや改善、機能追加など開発事業者とは付き合っていくこととなります。その上で、開発事業者が自社の課題に真摯に向き合ってくれて、対応をこまめに行ってくれることは非常に重要です。
開発事業者を選定する際はすぐに一社に決めてしまうのでなく、複数の開発事業者を比較・検討するべきだと言えます。そして、開発事業者になんらかのプレゼンをしてもらい、実際に経営陣や情報システム部門以外にも実際に現場で使う社員達にもどんなシステムがあるのかを知ってもらいましょう。その後、社員の声を反映できるようにアンケートを行い、開発事業者を決定することがERP導入の成功率を大きくあげてくれるでしょう。
導入チームの結成
ERPは業務の効率化や経営の合理化、データの部署を越えた共有など、企業の生産性を向上させ、経営を発展させる鍵となるものです。しかし、現在の企業の多くは部門・部署ごとと独自の業務プロセス・フローがあり、いろいろと異なる箇所はあるでしょう。そして、それぞれの業務ごとに最適化されたシステムが導入されていることが大半でしょう。しかし、部署ごとに違うシステムを使うということは同じ入力作業が何回も行われていたり、必要なデータをもらうために毎回別の部署に問い合わせたりと無駄な作業が数多く存在します。企業全体で見るとこれはものすごい量の人件費と時間が無駄になってしまいます。
ここですべての部門・部署のタスクをしっかりと洗い出し、それぞれの部門・部署に対応できるERPを作るために導入チームを作ることが有効です。また、この導入チームはそれぞれの部門・部署のタスクなどを共有して、タスクの共通点や部門・部署ごとの業務プロセスの違いなどをしっかりと見つけ出すことが重要です。ここで開発事業者を交え、コミュニケーションを取り合って進めていくべきでしょう。そうすることで、部門・部署関係なく使えるドキュメントのテンプレートやワークフローを見つけ出すことができ、ERP導入後の生産性向上につながっていきます。
組織全体のERP
ERPを導入するときはERPを導入する理由やメリットからERPとはなんなのかという根本的な点まで社員全員がしっかりと理解している状態にしましょう。この時に情報システム部門などが社内でしっかりとした講習会を行い、ERPが社員全体に関係するシステムであるということを指導していきましょう。
また経営陣もしっかりとERPを理解している必要があります。ERPが業務の効率化をサポートし、経営の見える化をします。ということは、統合データベースに蓄積されていくデータは現在の経営状況自体であり、これを分析することによって迅速な状況判断を可能にします。
このように経営陣も社員全員がしっかりとERP導入の目的を理解していて、それを最大限に活かせてこそ、ERPの導入が成功したと言えるでしょう。
まとめ
ERPは導入して終わりではありませんし、導入自体が目的になってERPを最大限に活用できていないなんてパターンにはなってはいけません。
ERP導入の成功のためにはERP導入前にERPを導入して企業をどのように変化させたいのかしっかりと思い描き、組織で共有しましょう。またERPを導入すると既存のシステムより使いにくくなった、なんてことにならないよう既存のシステムをしっかりと分析してよりよいものになるようにしましょう。開発事業者を選ぶ際は経営陣や情報システム部門だけでなく、現場の意見をしっかりと聞き入れなければ、業務の効率化は図れません。導入チームを結成することで、部門・部署間の違いをちゃんと把握することができます。それが業務効率化に大きく影響します。
最後にERPを導入する意義や理由を社員・経営陣がしっかりと理解している必要があります。そして、現場はERPを使って最大限に業務の効率化を図り、主要業務により多くの時間を費やせるようにし、経営は蓄積されたデータを使って、しっかりと加工・分析・経営状況の理解を行うことで最適に判断を下すことができ、企業の発展へとつなげます。これでやっとERP導入は成功するのです。
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