ダイキンから学ぶ求められる人材像
ダイキンをご存知ですか?
エアコンの世界的なメーカーとして有名ですよね。
しかし今、ダイキンはただの空調メーカーとしてだけではなく、DX・AI・IoTの面でも有名になっています。
中でも一番凄みを感じるのは2年間、現場に配属されずIoT、AIの基礎から最新テクノロジーの活用、さらに本業の空調だけでなく化学技術などの知識などを学ぶという点です。給料をもらいながら学べるということです。
驚きですよね
今回はダイキンの新入社員のうち、非情報技術系の希望者100人が受けることができる新入社員研修の内容と将来像を紹介します。自身の将来像形成に役立てましょう。
目的は集合知
ダイキンがAI・IoT・DXといった領域で社員を積極的に教育している目的として、社内でこれらこれからのIT知識についての集合知を形成するためとしています。
では集合知とは何でしょうか?
集合知とは、「多くの人の知性を集めると、少数や単数よりも優れた知性が登場する」という考え方です。「集団的知性」とも呼ばれます。
単純な「これだけたくさんの人がいるんだから、誰かが知っているだろう」とは異なります。それではただの知識です。
「集団的知性」ですから、「物事を知り、考えたり判断したりする能力」です。
今後AI・IoT・エッジコンピューティング・メタバースなど、まだ新しいITテクノロジーによってあらゆるビジネスがDXをし続けることになるのは間違いありません。
しかし、それを知っている人がごく少数では、偏った知識や思考により間違った方向に進むかもしれません。
社内に、より多くの人がこれら最先端の知見を元にした集団的知性があるかないかは、今後のビジネスをする上で大きな武器になることは間違いないでしょう。
ダイキンはそれを目的としているわけです。
カリキュラム
では希望した新入社員は1年目いったいどんなことを学ぶのでしょうか。
中心となるのは以下です。
・統計学
統計学の基礎を学びます
・機械学習
データの処理の方法を学んだ上で、機械学習の手法も学びます
・時系列予想
時系列データの処理方法と活用方法を学びます
・自然言語処理
文字データの機械学習の実装、音声対話の理論と活用、
オントロジー(事象をデータとして取り込むための言語化・概念化)を学びます
・画像処理
画像・動画処理の理論と演習、
物体の撮影データを畳み込みニューラルネットワークでどう処理するのかを学びます
・最適化
最適化計算の理論を学びます
・クラウド
クラウドやそれを構成する技術を学びます。
これらの内容を、何と、大阪大学の教員を招いて講義してもらうというスタイルです。
給料をもらいながら最先端の知識を基礎から大学レベルの教師陣に教えてもらえるなんてうらやましいですね。
さらに、ピンとくる人も多いでしょう。これらはまさに人工知能やデータアナリティクスの大本命と言える領域です。新入社員に教えるわけですから、逆に言えば、これらは今後の情報化社会のビジネスの基本になるということかもしれません。
これらの領域を知識で「わかる」だけでなく「できる」ようにすることがダイキンの狙いです。
わかる➡︎できる、さらにその先へ
ダイキンの目指すレベルとはいかなるものなのかというと、IPAに準拠した段階に分かれています。
IPAの段階について紹介します。
知っている◆レベル1
情報技術に携わる者に最低限必要な基礎知識を有します。
わかる◆レベル2
上位者の指導の下に、要求された作業を担当します。プロフェッショナルとなるために必要な基本的知識・技能を有しています。
できる◆レベル3
要求された作業を全て独力で遂行します。スキルの専門分野確立を目指し、プロフェッショナルとなるために必要な応用的知識・技能を有します。
テーマを作れる◆レベル4
プロフェッショナルとしてスキルの専門分野を確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベルです。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤーです。
企業内のハイエンドプレイヤー◆レベル5
社内においてテクノロジー・メソドロジー・ビジネスを創造し、リードするレベルです。社内において、プロフェッショナルとして自他共に経験と実績を有しており、企業内のハイエンドプレイヤーです。
国内のハイエンドプレイヤー◆レベル6
社内外において、テクノロジー・メソドロジー・ビジネスを創造し、リードするレベルです。社内だけでなく市場においても、プロフェッショナルとして経験と実績を有しており、国内のハイエンドプレイヤーです。
世界で通用するプレイヤー◆レベル7
市場全体から見ても、先進的なサービスの開拓や市場化をリードした経験と実績を有しており、世界で通用するプレイヤーです。
ダイキンが当初目指していたのはレベル3のプレイヤー層を獲得することでしたが、今後はレベル5までの社員の育成を図っていくそうです。
自社内で後輩の育成をしたり、テクノロジーでビジネスを作っていったり、実際に各部門で各レベルのプレイヤーが活躍してもらうためにはレベル4以降の社員が必要ということですね。
まとめ
ダイキンという大企業がかなり本腰を入れてITへの教育を行っていることがわかったと思います。
特に、新入社員用のカリキュラムは情報技術系として採用されていない人が対象になっている点がポイントですね。
ダイキンが、今後、社内の情報部門だけでなく現場に立つ人でもAIについて「わかる」「できる」「テーマを作れる」人材が必要と認識しているということです。
政府統計ですが、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると言われています。
IT能力の高い社員をいかに作るか、いかに成るか、が今後の企業にとっても個人にとっても重要になってきそうです。
自らのキャリアパス実現に向けて積極的なスキルの研鑽をしていきましょう。